2024/10/31

お月様のうた7(全12)


 
その日の夜。

ベッドの中でぐっすり眠っていたはずの

ふーちゃんは、怪物がでてくる夢をみて

うなされていました。


「へっへっへ。泣き虫はどこだ。
 やーい。恐がりめ、でてこい!」
怪物は足を踏みならし、
ドッシンガッシャンと大暴れしています。
「う、う〜ん。ヤダヤダ、怖いよう。」

〜つづく

2024/10/30

お月様のうた6(全12)

 

ふーちゃんは家に帰ると、

湿ってヨレヨレの紙を机の上にそっと広げました。

「……あれ?」

広げた紙は、よくみると

みつけた時とは少し違ってみえます。

 

外ではキラキラと見えていた光が、

なぜだか今はそれほどでもありません。

青白い輝きが

しゅんとしずんでいました。


「おかしいなあ。」

ふーちゃんは楽譜を手にとって、

ひらひらと動かしてみました。

けれど、なんにも聞こえません。

息をふうっと吹きかけても、
ポンともピンともいいません。
「あれれ。なーんだ、がっかり。」


〜つづく

2024/10/29

お月様のうた5(全12)


おなかの中がぽうっと

あかるくなるような暖かい音色です。

 

夕暮れの道、空には白いお月様が

浮かんでいます。


風に揺れて、ふーちゃんの胸の楽譜が

また、ポロンポロンとひびきました。

「わあ、すごい!いいもの見つけた。」


〜つづく

2024/10/28

お月様のうた4(全12)

「ふーん、へんなの。
 どこからか、とばされてきたのかな。
 もしかして誰かのおとしもの?」
 あたりを見回してもまわりにはだれもいません。
 
 そのとき、またさあっと風が吹いて
ふーちゃんの手の中で楽譜がひらりとゆれました。
 〜ポロロン、ピン、ポロロン〜
 (さっき聞こえた音だ!)

〜つづく

2024/10/25

お月様のうた3(全12)


しめった紙がちぎれないように
やさしくつまみあげると、両手でそっと広げてみました。

ふーちゃんは今年の春から
ピアノ教室にかよっています。
手のなかの青白い紙はふーちゃんがピアノでつかう
楽譜ににていました。
 
でも、ちょっとだけ違うところがあります。
銀色のインクで書かれたオタマジャクシのかたちは、
斜めになったり、五本の線を破って
おもいきり飛び出してみたりと、
なんだかちょっと楽しそうにならんでいました。

〜つづく

2024/10/24

お月様のうた2(全12)

 

ポロロン〜
ふーちゃんのほっぺたを、
ひんやりした風がするりととおり、
あたりにふしぎな音がひびきました。
 
ポロロン、ピン、ポロロン〜
「なんだろ?」
足元をみると、
ぽさぽさとはえた細い草に
何かが引っかかっているようです。

草をかき分けてみると、

一枚の紙切れがありました。

 

さっきまで降っていた雨と草の露で、

よれよれになっています。


〜つづく

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画像データが残っていないので、
文字を貼り付けてプリントしたものを
スキャンしています。お話の長さと展開が
変わっていますので、絵の中の文字はスルーして
見ていただきますようお願いします。
(2024年10月)

2024/10/23

お月様のうた1(全12)

 

雨がやんで、道の上には

小さな水たまりが

ぽつんぽつんとできていました。


「あめ、やんだ!」

窓から外を見ていたふーちゃんは、

お散歩にでかけることにしました。

お気に入りの赤い長靴をはいて、

「しゅっぱーつ!」


〜つづく

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先日終了した個展「すずの音風の音3」でも
粘土の額装作品を展示しましたが、
これはまた違う粘土素材を使って制作しました。
自作絵本が出る前に、色々な素材を使って
お話を作っていた時期のもの。
背景は「人形や珈琲店」と同じペインターという
お絵描きソフトを使って描いていました。
(2024年10月)
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さて、今週から
ひとつ小さなお話をはじめます。
「お月様のうた」全15回です。
このブログの中のお話は、ほとんどが以前所属していた
児童文学の集まりで書いていた物です。仲間と一緒に、
書きためた作品を掲載した同人誌も数冊制作しました。
その頃は、絵本と童話別々のグループで勉強会をして、
とにかく毎日かいていたので、特に発表していない小さなお話が
まだいくつか残っていますが、これはその中の一つです。
(2021年8月 旧サイト「かわむらすずみえほんブログ」より)

2024/10/17

すずの音風の音3 展示の紹介記事

 

展示開始の前日、新聞のイベント欄に
絵本の表紙絵入りで展示会の紹介をしていただきました。
その記事をご覧になって来たという方も
早い時間からいらっしゃいました。

2年ぶりの個展でしたが
前回の展示を覚えていてご来場くださった方からも
お声をかけていただきました。
どうもありがとうございました。




2024/10/16

すずの音風の音3 展示作品のこと

 

「すずの音風の音3」個展会場は、
紀伊國屋書店内のギャラリーなので、
本を探しにきたついでに見ようかなという
お客様も多くご来場されました。

ある日は、デザイン系の学生さんと思われる
方達数人が立ち寄って
展示をご覧になっていました。

私の粘土の額装展示されたものを見て、
〇〇さんのやっている感じのものだねと言っていて、
粘土でストップモーションアニメ作品を
作られている仲間がいるとのことでした。
作品のお話をしている様子がとても楽しそうでした。

また、ご自身でギャラリーを運営されている
という方は、最近は手書きより
デジタルで制作されたものが多いので、
こういう展示は実際に原画を見られる良い機会ですね
とお話されていました。


お店入り口のポスター
(この時は初日まだ開店前で
 ドアの内側に置かれていて、
 若干暗めに写っています‥)

2024/10/12

KNIT展

切り絵作家でニット作家の八角屋さんが
田中メリヤスさんとユニットを組んだBoubaries
のニットの展示会をしています。
(可愛い!棒針ーずだよ!)

キメの整った美しいだけの模様ではなくて、
ちょっとニヤリとさせてくれるユーモア漂う楽しい感じが
お二人の作品から滲み出ています。

昨日展示会場にお伺いして、
お話を聞くことができました。
綺麗な仕上げはもちろんのこと、
作品ができるまで、制作のことを
直接編み地を見せていただたりと、
もの作りが好きな人には、
楽しいイベントです。

展示は11日から14日までの4日間、
札幌のカフェギャラリー+オマージュで開催されています。

「ソレ、編んじゃったの?KNIT展」
Boubaries
(田中メリヤス+八角屋)


 

2024/10/11

ギャラリー紹介記事

 すずの音風の音3個展会場

展示期間中に、北海道新聞 道新WEBの
ギャラリー紹介コーナーの記者さんと
お話しする機会がありました。
最終日の会場の様子が記事になっています。

sappro10区 WEB

2024/10/10

すずの音風の音3 シマちゃん

 

個展会場では「ありがとう」と「またね」の
コメント入りカードに、お好きなスタンプを押して
お持ち帰りいただきました。
たくさん選ばれるのはどの動物か、
後で集計しようと思っていたのですが、
どうしてもその場になるとうっかり忘れてしまいます。

ですが印象としては、圧倒的に
シマエナガのシマちゃんが
一番多くポン!されていました。

会期日程前半に押されすぎたからか、
後半にはお腹の部分が
若干薄くなっていたくらいです。

他の2つよりもちょっとだけ大きめであったり、
唯一「シマ」と名前が添えてあったり
というポイントはあるかと思いますが、
「やっぱりシマエナガ!」という方が
多くいらっしゃいました。

ご自身でお持ちの手帳にみんなをポンとされる方もいて、
今回ご来場のみなさんに
楽しんでいただけていたら大成功です。

2024/10/08

空の形

 

出先の公園で、ふと空を見上げたところ。
虫くんたちが食事後の葉っぱです。

写真では上手く撮れなかったのですが、
本物はレース編みの葉っぱが並んでいるようで
隙間から見える空の模様が面白くて
しばらく見とれてしまいました。

昨日は、今季初の雪虫にも遭遇してしまい、
秋からあっという間に冬ですね。

2024/10/07

すずの音風の音3 キャンバス地の絵

今回展示したキャンバス地の絵は、
いつも使う紙と同じ画材の
オイルパステルで描いたものです。

下地剤をペインティングナイフで乗せ、
手書きのザラっとした感じが
より感じられるような絵に仕上げたいと思いました。
写真2段目左側の絵
「おいしい夢の木」の幹の木肌は、
木の皮の感じになるようにピンポイントで
さらに盛り上げた後、またナイフで引っ掻いて
表面に跡をつけてからの着色です。

そして筆は使わず、
パステルを何度もグリグリと乗せて
厚塗りして仕上げています。

2024/10/05

すずの音風の音3 ポストカード

二日目にご来場の方は、
前回のすずの音風の音2
(2022年の年末、道新ギャラリー)
にご友人と来て、今日も一緒に来る予定だったそう。
でも今そのお友達が体調を崩しているので
お見舞い用のカードを探しているとのことでした。

お友達もこの展示を
楽しみにしていらしたそうで、来られなくて残念と。
今回はありがとうスタンプに
私からも一言メッセージを書いて
お渡ししました。

2024/10/04

すずの音風の音3 たんぽぽの話


今回は、「子供の頃に絵本を持っていました」
という方数人とお話することができました。

幼稚園時代に、園で読んだ記憶があると
おっしゃっていたお一人の絵本が
「たんぽぽ だいすき」(チャイルド本社)
さく・え/かわむらすずみ
でした。

たんぽぽの花を抱えたくまの子が、
出会う動物たちに大好きな花を
プレゼントしていきます。

当時、描き上げた原画を手にした
担当編集さんが最初に確認したのは、
動物たちに渡したたんぽぽの数と、
くまの子の手に残るたんぽぽの数でした。

もちろん自分でも最後まで確認して書いたので
間違いはないはずと思っていましたが、
「いち、にい、さん‥」と目の前で数えられている間は、
ちょっとドキドキしたのを覚えています。

そんなエピソードをお話しすると、
彼女は手にした絵本を眺めて
へえ〜っと興味深そうに笑っていました。

2024/10/03

すずの音風の音3 場所のこと

 

会場は、書店の児童書コーナーのすぐ横です。
人気の読み物の書棚が近いこともあって、
絵本よりも長い物語を読む年代の子供達と
お母さんが近くを通り過ぎて
「何かしら」と戻ってきてのぞいてくれます。

正面のガラス窓のおかげで室内は明るく、
せっかくなので外からもわかるように
ガラス窓の窓際に、以前作った
ちいくまちゃんとしまくまちゃんの
立体ボードを立てかけました。

外からそれが見えたので、
何があるのか見にきたというかたも
いらっしゃいました。

2024/10/02

すずの音風の音3 終了しました

 
9月26日(木)、
「すずの音風の音3」が終了しました。
この展示を見つけてご来場いただいだき、
お声をかけていただき、
遠くからも応援のお便りをいただき、
皆さんからたくさんの元気をいただきました。
どうもありがとうございました。

今回も飾りを作って
展示作品と一緒に並べていると、
会場内ではその飾り付けの方に興味のある方が
多くいらっしゃいました。
やはり立体的なものは、
近くで見ると楽しいですよね。

こちらは今回原画を展示した
「とだなのなかのおばあさん〜アンズのおとしもの」
のワンシーンを立体にしたものです。