2024年3月8日金曜日

人形や珈琲店9(全10)

「うわああ。」

足元の人形達につまずきそうになりながら、

急いで一階に下り、

あわてて自分の両手を確認しました。

さっき見えた細い糸はもうありません。

右手には、しんの折れた鉛筆。

左手には小さなスケッチブックを持っているだけです。

 

カウンターにはできたてのコーヒーが

良い香りをたてていました。

 

「良い絵はかけましたか?」

店主は、とむさんの折れた鉛筆を見ながら

ほほえむと、湯気のたつ

小さいカップを差し出しました。

後ろの階段を見ると、

まだ人影がゆらゆらと揺れています。

 

〜つづく

(9/10) 次回最終話。