少しずつ奥に進んでいくと、部屋の隅に鏡がかけられていました。
そのすぐ下に置かれた人形を見ていたとむさんは、
急に体がうまく動かなくなりました。
(両手が重くて上がらないぞ。
雨にあたって風邪でもひいたかな……)
そっと顔をあげると、
鏡の中にはいつもの自分の姿が見えます。
でもなにかがおかしいと感じました。
スケッチブックを持つ左手と、
鉛筆を持つ右手から、それぞれ
一本の細い糸が垂れています。
つつっと、両手が天井に向かってひっぱられると、
右手に持った鉛筆の芯が
パキッと軽い音をたてました。
「わっ。」
とむさんは声をあげると
階段に向かって走り出しました。
〜つづく
(8/10)