2024年3月7日木曜日

人形や珈琲店8(全10)

少しずつ奥に進んでいくと、部屋の隅に鏡がかけられていました。

そのすぐ下に置かれた人形を見ていたとむさんは、

急に体がうまく動かなくなりました。

(両手が重くて上がらないぞ。

 雨にあたって風邪でもひいたかな……)

そっと顔をあげると、

鏡の中にはいつもの自分の姿が見えます。

でもなにかがおかしいと感じました。

 

スケッチブックを持つ左手と、

鉛筆を持つ右手から、それぞれ

一本の細い糸が垂れています。



つつっと、両手が天井に向かってひっぱられると、

右手に持った鉛筆の芯が

パキッと軽い音をたてました。

 

「わっ。」

とむさんは声をあげると

階段に向かって走り出しました。

 

〜つづく

(8/10)