2024年3月6日水曜日

人形や珈琲店7(全10)

左右の壁際には、

うねうねとした模様がうかぶ、

木彫りの低い棚がならんでいます。

その上に自分たちの出番を待つ

大小さまざまな人形が、

糸をたらして静かに座っていました。

 

ぼんやりくすんだ灯りのもと、

棚やテーブルにのっている人形達は、

顔だけが浮かび上がってみえます。

小さな顔の一つを見下ろすと、

長いまつげは真っ直ぐに正面を

見つめていました。

 

あの目が動いて、

急にこちらを向くのではないだろうか。

とむさんは、そんな気がして、

なかなか目をそらすことが

出来ませんでした。

 

〜つづく

(7/10)