2024年3月5日火曜日

人形や珈琲店6(全10)

 

よく見ると、灯りとりの小窓には

人形の絵が描かれているマッチ箱が、

兵隊のように一列に並んで続いています。

マッチ箱の兵隊がとぎれて、

ランプのともる二階の部屋に着きました。

 

灯りが揺れると、

それほど広くない部屋の角には、

いくつもの人形の影が、

こちらを笑っているように揺れています。

 

部屋の中央におかれている

大きなガラスケースの中には、

昔話の登場人物が並んで眠っていました。

正面には、ほうきにのった

かぎ鼻の魔法使いが細い糸で釣られています。

その隣には、大きな鎧の人形がヤリを右手に

こちらを睨んでいます。

部屋にいるのは人形だけでした。

 

「ランプの火がゆらいで、人影に見えたのか。」

とむさんは、鎧の人形を横目でみながら、

自分に言い聞かせるようにつぶやきました。

 

〜つづく

(6/10)