「あついコーヒーを一杯もらおうかな。
ところで二階はどうなっているの?」
「上は、操り人形のコレクションです。」
「へえ、おもしろそうだね。」
「はい。お客さんは絵描きさんですか。」
男の人は、カウンターの中から
とむさんのスケッチブックを見ながらいいました。
「それなら、うちの人形達を描いてやってくださいよ。」
「いいんですか?じゃあ、さっそくみせてもらうかな。」
「どうぞどうぞ。コーヒーが入る間に見ていらしてください。」
男の人は小さくうなづきながら
お湯のポットをゆらゆらと揺らしています。
階段の下から見上げると、ランプのあかりの中、
いくつかの人影が動いているのがみえました。
(他にもお客さんがいるのかな。)
木で出来ている階段は、一足ごとにきしむ音が響きます。
キイ、ギシ……。
足元の壁に沿って、古めかしいよそ行きの洋服を着た
たくさんの人形達が、行儀良くならんで
こちらを見つめていました。
〜つづく
(5/10)