2024年3月4日月曜日

人形や珈琲店5(全10)

「あついコーヒーを一杯もらおうかな。

 ところで二階はどうなっているの?」

「上は、操り人形のコレクションです。」

「へえ、おもしろそうだね。」

「はい。お客さんは絵描きさんですか。」

男の人は、カウンターの中から

とむさんのスケッチブックを見ながらいいました。

 

「それなら、うちの人形達を描いてやってくださいよ。」

「いいんですか?じゃあ、さっそくみせてもらうかな。」

「どうぞどうぞ。コーヒーが入る間に見ていらしてください。」

男の人は小さくうなづきながら

お湯のポットをゆらゆらと揺らしています。

 

階段の下から見上げると、ランプのあかりの中、

いくつかの人影が動いているのがみえました。

(他にもお客さんがいるのかな。)

 

木で出来ている階段は、一足ごとにきしむ音が響きます。

キイ、ギシ……。

足元の壁に沿って、古めかしいよそ行きの洋服を着た

たくさんの人形達が、行儀良くならんで

こちらを見つめていました。

 

〜つづく

(5/10)