男の人は、まるでとむさんが来るのを
知っていたかのように、
にっこりうなずいています。
「あの、コーヒーの良い香りがしたので……。」
「はい。一階はコーヒー専門店でございます。」
「ならちょうどいい。
一休みさせてもらおうかな。」
カウンターだけの狭いお店は、
ちいさな椅子が5つあるだけでした。
あちらこちらに古いランプがおかれ、
分厚い外国の本が並んでいます。
壁には、動いているのが
不思議なくらいの古い柱時計。
外からぼんやりと見えた灯りは、
窓ガラスに映るランプの光でした。
お店の奥には、二階へ続く
細い階段がみえました。
〜つづく
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