2024年3月2日土曜日

人形や珈琲店4(全10)

 

男の人は、まるでとむさんが来るのを

知っていたかのように、

にっこりうなずいています。

「あの、コーヒーの良い香りがしたので……。」

「はい。一階はコーヒー専門店でございます。」

「ならちょうどいい。

 一休みさせてもらおうかな。」

 

カウンターだけの狭いお店は、

ちいさな椅子が5つあるだけでした。

あちらこちらに古いランプがおかれ、

分厚い外国の本が並んでいます。

 

壁には、動いているのが

不思議なくらいの古い柱時計。

外からぼんやりと見えた灯りは、

窓ガラスに映るランプの光でした。

お店の奥には、二階へ続く

細い階段がみえました。

 

〜つづく

(4/10)