2024年2月28日水曜日

人形や珈琲店3(全10)

 
玄関までの敷石の手前には、
木彫りの看板が立っていました。
人の顔をかたどった、
大きな目鼻がある看板には
『人形や 珈琲店』とありました。
 
「人形や?へえ、こんなところに
 こんな建物があったんだ。」
手前の細く開いている小窓からは、
ぼんやりとした灯りがにじみ、
コーヒーの香りがただよってきます。
 
とむさんはその良い香りにひかれて、
そっと中の様子をうかがいました。
 
「いらっしゃいませ。」
静かにドアが開き、
ささやくような声が聞こえました。
ドアの向こうには、
背の高い男の人が立っていました。
 
〜つづく
(3/10)