2024年2月27日火曜日

人形や珈琲店2(全10)

 

さらさらと細い雨は、

とむさんのこうもり傘をつたって落ちては、

すぐ目の前の道を、ゆっくりにじませて消えていきます。

見慣れた道も、晴れた日とはまた違う景色でした。

 

いつものようにバス通りへ出たとき、

とむさんは目の前にぽつりとおかれている

赤いとんがり帽子の工事標識に気づきました。

 

とんがり帽子の行列の先は、道幅が狭くて、

傘を差しては通りにくそうです。

「しょうがないなあ。」

あたりを見回すと、左手の先に、

ぼんやり灯りが見えました。

「なんの灯りだろう。ちょっと行ってみようかな。」

 

とむさんは、細い通りの小さな灯りに誘われるように

ゆっくりと進んでいきました。

すると灯りを囲むように、

木が朽ちて壊れかけた垣根がみえてきました。

ところどころに崩れた後がある赤い煉瓦の壁。

灯りのもとは二階建ての細長い一軒家でした。

 

〜つづく

(2/10)


2017年7月::::::::::::::::::::::::::::
雨の日のすこし、ふしぎの小さなお話で、全10話です。
 
私は大人になってから、遊園地の絶叫マシーンと
怖いテレビやホラー映画を避けてきました。恐がりなのと、
寝る前にみた映像は高確率で夢に見るタイプだからです。
でも、ちょっと不思議なものってなぜかひかれますよね……。