さらさらと細い雨は、
とむさんのこうもり傘をつたって落ちては、
すぐ目の前の道を、ゆっくりにじませて消えていきます。
見慣れた道も、晴れた日とはまた違う景色でした。
いつものようにバス通りへ出たとき、
とむさんは目の前にぽつりとおかれている
赤いとんがり帽子の工事標識に気づきました。
とんがり帽子の行列の先は、道幅が狭くて、
傘を差しては通りにくそうです。
「しょうがないなあ。」
あたりを見回すと、左手の先に、
ぼんやり灯りが見えました。
「なんの灯りだろう。ちょっと行ってみようかな。」
とむさんは、細い通りの小さな灯りに誘われるように
ゆっくりと進んでいきました。
すると灯りを囲むように、
木が朽ちて壊れかけた垣根がみえてきました。
ところどころに崩れた後がある赤い煉瓦の壁。
灯りのもとは二階建ての細長い一軒家でした。
〜つづく
(2/10)
2017年7月::::::::::::::::::::::::::::
雨の日のすこし、ふしぎの小さなお話で、全10話です。
私は大人になってから、遊園地の絶叫マシーンと
怖いテレビやホラー映画を避けてきました。恐がりなのと、
寝る前にみた映像は高確率で夢に見るタイプだからです。
でも、ちょっと不思議なものってなぜかひかれますよね……。