2024年2月3日土曜日

すみれさんと雨2(全16)


「あらら、どうかした?」
すみれさんは椅子から立ち上がり、
雨の流れるガラス窓を見つめました。
 
外の通りを男の人がひとり、傘をささずに歩いています。
派手な赤いベストにチェックのズボンをはいて、
街路樹が並ぶ細い道をすすんでいました。
「見かけない顔ねえ。」
 
踊るような足取りがピタリと止まると、
男の人は空を見上げ(うん)とひとつうなづきました。
そしてポケットから、なにやら小さな光る物を取り出し、
目の前の水たまりにちゃぷと落としました。
(こんな雨の中、いったい何してるのかしら。)
 
次に男の人はにっと笑うと、
その丸い水たまりの上へ、ぴょんっとジャンプしました。〜つづく