「あの、ここはどこでしょう。」
すみれさんが一番聞きたかった事でした。
「そりゃ、見ての通り、仕立て屋の工場です。」
「それじゃ、あなたは?」
「見ての通り、仕立て屋ですよ。ちょっと特別ですがね。」
たしかに、はさみや針山が机の上に並んでいました。
「仕立て屋さん?なるほど、お忙しそうね。
…ところで、なにが特別なんです?」
すみれさんの質問に、男の人は
手元の糸を目の前に持ち上げて、見せてくれました。
「それは、雨の日だけ開店している仕立て屋なんですよ。
ほら。これはね、雨のいとなんです。」 〜つづく