2024年2月12日月曜日

すみれさんと雨10(前16)

 

「雨のいと?」

「そう、この雲の粒が、雨を糸にしてくれるんです。」

男の人はそう言うと光るたまを一つポケットからだして、

すみれさんの手にのせました。

ひやりと冷たいそのたまは、

ガラスの小さなかけらのように見えました。

 

「雨の糸に、雲の粒。へえ、きれいなものねえ。」

すみれさんが感心してつぶやくと、

男の人はちょっとうれしそうに答えました。

 

「そう、それは上空一万メートルの高さでできる雲の粒です。

 この冷たいたまが、雨を糸にしてくれるんですよ。」

(なるほど、水たまりからずっと続いていた細い糸は雨の糸だったのね。)

 

机の後ろには、一人乗り用の自動車が見えました。

大きなタイヤに、ブルーの丸い車体。

前面に並ぶ二つのライトが、目玉のようにピカピカ光っています。 〜つづく