「雨のいと?」
「そう、この雲の粒が、雨を糸にしてくれるんです。」
男の人はそう言うと光るたまを一つポケットからだして、
すみれさんの手にのせました。
ひやりと冷たいそのたまは、
ガラスの小さなかけらのように見えました。
「雨の糸に、雲の粒。へえ、きれいなものねえ。」
すみれさんが感心してつぶやくと、
男の人はちょっとうれしそうに答えました。
「そう、それは上空一万メートルの高さでできる雲の粒です。
この冷たいたまが、雨を糸にしてくれるんですよ。」
(なるほど、水たまりからずっと続いていた細い糸は雨の糸だったのね。)
机の後ろには、一人乗り用の自動車が見えました。
大きなタイヤに、ブルーの丸い車体。
前面に並ぶ二つのライトが、目玉のようにピカピカ光っています。 〜つづく