2024年2月13日火曜日

すみれさんと雨11(全16)

 

「これはね、電気自動車です。

 これで、雲の粒をとりにいくんですよ。」

ドアの横にはミラーの変わりに、小さな羽根がついていました。

 

「そうやってその糸で仕立てた物は、そりゃあ光輝くドレスにぴったり。

 縫い目がいっさいわからないくらい、美しい仕立物が出来上がります。

 もう、注文はひっきりなしでね。今、新しいお客様は

 受け付けていないんですよ。申し訳ありません。」

仕立て屋さんは、すみれさんに向かって頭をさげました。

 

「え、いいえ。私はそんなつもりじゃなかったんだけど‥‥。」 

仕立て屋さんが手にしているドレスは、

角度を変えてみると、虹のように光っていました。

「でも、ちょっと残念ねえ。」 〜つづく