少し前にこちらに掲載したお話「おしゃべりなうさぎの光る石の話」は
絵本の勉強会とは別に以前所属していた児童文学の会「宙(そら)」で書いたものです。
宙の会は児童文学の夜間短期講座を受けたグループが集まって勉強していた会で、
同人誌創刊号「宙」は2002年に、2004年には「宙2号」が発行されました。
この同人誌仲間の泉さんのお話「やさいのおしゃべり」(作 泉なほ、絵 いもとようこ)
は、素敵な絵がついて後日絵本出版されています。
私のお話のあと書きを旧ブログより下記に転載します。
::::::::::::::::::::::::::
手で持ちやすい細長い草をえらんで、
四角い金網の窓からくくっと差し込む。すると、
シロップづけチェリーのような赤い目が、くりりと動く。
あの透き通った目から見ると、こちらの世界は
どんなふうなのだろうかと、とても不思議だった。
子供の頃から、我が家には常に動物がいた。
夏にはキリギリスや蝶々。金魚、ひよこはお祭りで。
さらにハムスター、インコ、あひる等々。
小学生になると、真っ白いうさぎも
我が家の一員になった。
夢中で食べる様子がおもしろかったので、
私は時々近くにはえている草をむしりとって、
小屋の金網に差し込んでは眺めていた。
彼女は真っ赤な丸い瞳を、
私の目とはあわせず、どこか遠くをみていた。
草をシャクシャク食べている様子は、
まるでその視線の先にいる誰かと、
きりなくおしゃべりをしているようにも思えた。
今でも『うさぎ』と言うと、
緑の草、真白い毛、そして赤い目と、
あざやかな色彩が目にうかぶ。
〜児童文学同人誌「宙 SORA」2号(平成16年発行)
後書き ひとくちエッセイ『おしゃべりなうさぎ』より〜2014年10月19日