2023/02/28

おしゃべりなうさぎの光る石の話12(全15)

 
でね。川の流れがはやくて、
みるみるうちに例のでこぼこが削られていって。
しまいに、どんぐりくらいに
まあるくなっちゃいましてね。
でも、そうなるとよくよく磨かれたみたいに
キラキラ輝いて見えましたよ。
 
それから星の子は、流れに浮かびながら、
それは気持ち良さそうに、
ピカリピカリとやさしく歌い出しました。
 
さらさら ひんやり 水の中
なんだか 夜空 みたいだよ
そよそよ ひんやり 風が吹く
ほらほら 夜空 みたいでしょ

〜つづく 

2023/02/27

おしゃべりなうさぎの光る石の話11(全15)

 

 
何って。いやあ、あわてましたよ。
飛び起きて音のしたほうを見るとね。
穴から転がり出した星の子が、
川に落ちてながされていくじゃないですか。
 
実はわたし、全然泳げなくってねえ。
でも、足の早さには少々自信がありますからね。
見失わないように急いで川岸を
走って追いかけました。
時々声をかけながらね。
 
なのに星の子ったらわたしの呼ぶ声に、
「気持ちいいなあ。
 君も泳げたら良かったのに」
なんて言ってましたね。
〜つづく

2023/02/24

おしゃべりなうさぎの光る石の話10(全15)

 

 それでも、朝になったらきっとなんとかなるさなんて、
木の上にあるリスの巣穴の中で
またのんきに眠ってしまったらしいんです。
でもね。ほら、その子ったら
寝相が悪いっていったでしょ。
眠ったまんま、またふらふらっと飛び出ちゃって。
たまたまその木の下にあった
わたしの巣穴の中に転がり落ちてきたって訳なんですよ。
 
わたしもそりゃあ、びっくりしましたけどね。
でもまあ、もう一人分くらいの眠る場所はあるし。
わたしの巣穴の中に一晩泊めてあげる事にしたんですよ。
 
そしたら、その子の寝相の悪い事ったらひどいんですよ。
あっちの壁にコロン、こっちの壁にコロン。
でもねえ、もう夜も遅いし、
そのうち、わたしもウトウトしちゃってね。
ボチャンって大きな音が聞こえるまで、
まったく気がつかなかったんです。
 〜つづく

2023/02/11

おしゃべりなうさぎの光る石の話9(全15)

 

 
一人前の星っていうのはね。
そりゃあ、夜空で立派に光ってるやつだそうで。
でもその子はまだ光が足りないらしいんです。
赤でも黄色でも、
とにかくピカピカ光っていないと、
夜空では出番がないそうなんです。
 
その夜も全然出番がなかったんで、
雲のベッドで寝ていたそうなんです。
それがどうも寝相が悪いらしくってね。
はっと気がついたら、
真っ逆さまに落ちていってるところで。
 
ああ、このまま流れ星になって
消えちゃうのかなあなんて思っていたら。
どっこい、森一番の背の高い木に引っかかって。
最初に見つけてくれたリスの家族に
助けてもらったそうなんです。
 〜つづく

2023/02/09

おしゃべりなうさぎの光る石の話8(全15)

 

 それがねえ。
うれしい事にわたし、
その星の子の話す言葉がわかったんですよ。
月に住んでいたっていう
ご先祖様のこともあるでしょうが。
それより、毎日夜空を見ていたおかげでしょうね、
きっと。
 
でもいったいどうやって、
あの空の星が木の下にあるわたしの巣穴にまで
たどりついたんでしょう。
わたしが聞くと、
その子はピカリピカリ話しだしました。
〜つづく

2023/02/08

おしゃべりなうさぎの光る石の話7(全15)

 

 
その日の夜も流れ星を一つ見て、
とてもいい気分で巣穴にもどりました。
でもしばらくすると、
外から石ころみたいな何かが
ころころところがってきて。
 
それがいやにトゲトゲ、ゴツゴツしていてね。
最初はハリネズミと間違えた程でした。
わたしが
「ずいぶんとがたぼこしているなあ」
って言ったら、その石ころは
「ぼく、まだ一人前の星じゃないんだ」
なんて言うんですよ。

なんと星のこどもだったんです。
ほら、あの夜空にピカピカしているお星様のですよ。
 〜つづく

2023/02/07

おしゃべりなうさぎの光る石の話6(全15)

 

でもね、それを聞いて(はあ、なるほど)
って思いましてね。
確かに満月の夜なんか、
特にどきどきして眠れなかったんですよ。
わたしはね、だったらいっその事
ゆっくり月をみた後にベッドに入れば、
きっとうまくいくんじゃないかと考えました。
 
それで寝る前はいつも星を数えたり、
月をながめたりしました。
しばらくそうして夜空をみていると、
ほっと安心して
ぐっすり眠れるようになったんです。
あっと、ここからが大事な話なんです。
うん、えへん。
 〜つづく

2023/02/06

おしゃべりなうさぎの光る石の話5(全15)

 

 で、色々聞いてまわったところ、
二軒となりのアナグマさんの話なんですが。
実に良く当たるって評判の
占い師がいるらしくって。
まあ、アナグマさんていやあ、
もともとの宵っ張りなんで、
もちろん彼女の悩みは
夜更かしじゃあなかったそうですが。
 
それが、どんな悩みも
すっぱり解決してくれるって噂でねえ。
それでわたしも一度、
その占い師のフクロウばあさんに
みてもらう事にしたんです。
 
はあ。そりゃあもう、驚きましたよ。
そのとき、フクロウばあさんに言われた事なんですが。
わたしのご先祖様は昔、
月に住んでいたっていうんですから。
 
〜つづ

2023/02/04

おしゃべりなうさぎの光る石の話4(全15)

  


いや眠れないなら、起きてりゃいいだろって事に
なるでしょうがね。
でも、そうもいかないんですよ。
わたしはね、夏になると畑で野菜を育てているんです。
いやあ、夏野菜はいいですよ。
もぎたての、みずみずしいきゅうり。
ああ、のどがなりますねえ。
 
それで、朝は早起きをして
涼しいうちに草むしりをしたり、
近くの川から水を汲んできて、
それをまいたりしなくちゃいけないんです。
 
でも夜更かしでは、朝早く起きられないでしょ。
ベッドに横になっても、次の朝に早起きできるか、
心配になっちゃって。
気にしだすとねえ、もっと眠れなくなっちゃうし。
もう、毎日それじゃあ寝不足になっちゃいますよ。
 〜つづく

2023/02/02

おしゃべりなうさぎの光る石の話3(全15)

 

ああ、すみません。名前もまだでしたね。
わたしは、このずっとずっとさきの
森にすむうさぎです。
おしゃべり好きなんで、
みんなわたしのことを、
おしゃべりうさぎってよびます。
 
森では、大きな木の根元に巣穴を掘っていて、
夜はそこに眠るんです。
夏はひんやり涼しく、冬はぽかぽかあたたかく、
とてもいごこちがいいんですよ。
でもね。今年の夏、ちょっと困った事がありまして。
というのもね、どうにも夜になると
ぱっちり目がさえて、眠れなくなりましてね。
 〜つづく

2023/02/01

おしゃべりなうさぎの光る石の話2(全15)

 

わたしね、前にもこの桜の花びらのように、
やわらかな優しいももいろの光を
見た事があるんです。
いや、わたしの物っていうのとは
ちょっと違うんですがね。
この石はもともとここに?
ああ。魚のお腹から…なるほどね。
 
わたしがどうしてこんな町なかまで来たのか、
それは不思議ですよね。
ほら見て下さいよ、この長い耳。
ほかのうさぎにくらべても
ずいぶん立派だと思いませんか。
いろんな音がね、それはそれは
よく聞こえる耳なんですよ。ええ。
そのおかげで、ここにたどり着いたって訳でして。
 
ほら。あそこの川沿いあたり、すごいでしょ。
土手に咲くセイタカアワダチソウが。
あの風にゆれて、おしゃべりする音。歌う声が。
 
サワサワ、ザザザってね。
 〜つづく
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おしゃべりなうさぎの光る石の話2です。
このお話を書いている時は、
うさぎがこちらを見て
ぐいぐいしゃべってくる様子が目に浮かんできて、
今までそんな書き方をしたことがなくて、
急いで言葉を書き留めなくっちゃという感じ書いていました。
そのうさぎの可愛らしい圧を想像すると
なんだか書いていて楽しくなっていきました。